雹はなぜ降る?できる仕組みとあられとの違い|車が凹むほど硬い理由をPDR職人が解説

晴れていたのに空が急に暗くなり、バラバラと氷の塊が降ってくる——雹(ひょう)は、遭遇すると誰もが驚く現象です。しかも真夏の暑い日に降ることさえあります。

「なぜ氷が降ってくるのか」「あられと何が違うのか」「どうしてあれで車が凹むのか」。このページでは、雹害車の修理を本業とするPDR(デントリペア)専門店のSURREALが、気象庁の資料をもとに雹のできる仕組みを整理したうえで、修理の現場で実際に見ている「車の凹み方」までつなげて解説します。

気象の数値はすべて気象庁の公表資料に基づいています(出典はページ末尾に記載)。当店が現場の経験としてお伝えするのは、車の凹み方に関する部分です。

雹(ひょう)とは?あられとの違いは「大きさ」だけ

まず言葉の整理から。気象庁の予報用語では、雹はこう定義されています。

ひょう(雹):積乱雲から降る直径5mm以上の氷塊。
あられ(霰):雲から落下する白色不透明・半透明または透明な氷の粒で、直径が5mm未満のもの。

気象庁「予報用語 降水」より

つまり雹とあられを分けているのは、大きさ(直径5mm)だけです。成分も、できる場所も同じ氷の粒で、5mm未満なら「あられ」、5mm以上になったら「雹」と呼び方が変わります。

似た言葉との違いを整理すると、次のようになります。いちばん右の列は、当店が修理の現場で見ている車への影響です。

名称気象庁の定義車への影響(当店の実感)
雹(ひょう)積乱雲から降る直径5mm以上の氷塊大きさ次第で凹みが発生する
あられ(霰)直径5mm未満の氷の粒。「雪あられ」と「氷あられ」がある通常は目立つ凹みになりにくい
みぞれ雨と雪が混在して降る降水凹みの心配はない
凍雨(とうう)雨滴が凍って落下する透明の氷の粒凹みの心配はない

なお同じ「あられ」でも性質が違い、気象庁は雪あられを「白い色で不透明な氷のつぶ」「固い地面に当たるとはずんで割れることもあり、簡単につぶれます」、氷あられを「半透明な氷のつぶ」「固い地面に当たるとはずみますが、簡単にはつぶれません」と説明しています。

ここが車にとって重要なところで、簡単につぶれない硬い氷が、5mmを超える大きさで落ちてくる——これが雹害の正体です。

雹ができる仕組み|積乱雲の中で氷が育って落ちてくる

雹を作るのは積乱雲です。いわゆる入道雲・雷雲のことで、気象庁によれば雲の高さは10キロメートルを超え、時には成層圏まで達することもある巨大な雲です。一方で水平方向の広がりは数キロ〜十数キロメートル、一つの積乱雲がもたらす現象は30分〜1時間程度と、背が高く、範囲は狭く、短時間という特徴があります。

この雲の中で起きていることは、ごく単純に言えば次の流れです。

  1. 地面付近が暖かく、上空に冷たい空気がある——この状態(大気が不安定)になると、強い上昇気流が生まれて積乱雲が発達します。
  2. 雲の中で氷の粒ができる——高いところは氷点下なので、水滴は凍って氷の粒になります。
  3. 落ちようとしても、上昇気流に押し戻される——気象庁の説明では、積乱雲の中は上昇気流がとても強いため、小さな氷の粒はなかなか下に落ちることができず、周りの粒とぶつかったりくっついたりして、もっと大きな粒に成長します。一度上がって終わりではありません。落ちかけては押し戻されることを何度も繰り返し、そのたびに氷をまとって育っていきます
  4. 支えきれなくなって落下する——気象庁によれば直径が2センチメートルぐらいになると、上昇気流が支えきれなくなり、落ちてくるとされています。
  5. 溶けきらずに地上へ届く——通常、氷の粒は落ちてくる間に溶けて雨に変わりますが、大きく育った粒は溶けきらず、氷のまま地上に降ってきます。これが雹です。
雹ができる仕組みの図解 積乱雲の中で氷の粒が落ちかけては強い上昇気流に押し戻されることを繰り返し、そのたびに大きく育って、支えきれなくなると雹として落ちてくる流れを示した断面図 高さ10km超 氷点下の世界 地上 0℃ 小さい粒 落ちかけては押し戻され、そのたびに大きくなる 直径2cmほどで 支えきれず落下 溶けきらず氷のまま 雹は「雲の中で何度も上下しながら育った」氷 ※気象庁の資料をもとにSURREALが作成した模式図です

ポイントは「氷が空から落ちてくる」のではなく、「雲の中で何度も上下しながら育ってから落ちてくる」という点です。上昇気流が強い積乱雲ほど氷の粒は長く雲の中にとどまり、往復の回数が増え、その分だけ大きく育ちます。大きな雹が降ったときは、それだけ上昇気流の強い積乱雲だったと考えられます。

気象庁は、雹の中には「みかんほどの大きさや、ソフトボールくらいの大きさになるものもある」としています。あの大きさの氷が、雲の中を何度も往復しながら育った末に落ちてくる——これが車にとって何を意味するかは、後半でお伝えします。

「夏なのに氷が降るの?」——実は真夏より春と秋のほうが多い

「暑い日に氷が降るのはおかしい」と感じる方は多いのですが、実はここに誤解があります。気象庁は雹は春や秋に降りやすく、夏はむしろ他の季節より頻度が低いと説明しています。理由はこうです。

  • 春・秋:地面付近は暖かいのに、上空には冬のような冷たい空気がやってくることがある。この温度差で積乱雲が発達し、雷が鳴ったり雹が降ったりする。気象庁は具体的に「5月や10月など」と挙げています。
  • 上空の気温が他の季節より高く、氷ではなく水の粒が雲になっていることも多いため、あまり雹は降らない。
  • :そもそも積乱雲が発達しにくい。

「夏なのに氷が降ってきた」という驚きは、本来は溶けきってもおかしくない条件なのに、溶けきらないほど大きな氷が育っていたことを意味します。真夏の降雹はむしろ、それだけ強い積乱雲だったという見方もできます。

ちなみに日本の記録に残る最大の雹は、大正6年(1917年)6月29日に埼玉県中條村(現在の熊谷市周辺)で観測されたもので、直径約29.5センチメートル、重さ3,400グラム。「かぼちゃ位の大きさ」と記録されています(熊谷地方気象台)。秤にかけるまでに少し溶けてなおこの重さです。

当店が全国の降雹に対応してきた実感でも、3月から10月ごろまでは降ることがあるという感覚です。気象庁が挙げている「5月や10月」はまさにこの範囲の中にあり、降る可能性のある期間そのものが長いとご理解ください。時期については雹が降る時期はいつ?で詳しくまとめています。

雹が降る前に現れる3つのサイン

雹は積乱雲から降るため、積乱雲が近づくサインがそのまま雹の前触れになります。気象庁は次の3つを挙げています。

  • 真っ黒い雲が近づいてきた
  • 雷の音が聞こえてきた
  • 急に冷たい風が吹いてきた

気象庁はこれらを感じたら「まもなく、激しい雨と雷がやってきます」と注意を促しています。真夏の暑い日に急に冷たい風を感じたら、それは上空の冷たい空気が降りてきているサインです。車を屋根のある場所へ移動できるかどうかは、この数分で決まります。

ただし、積乱雲の水平方向の広がりは数キロ〜十数キロメートル。同じ市内でも「こちらは降ったが、あちらは降っていない」が普通に起こります。「うちの地域は降らない」という油断がいちばん危険です。駐車場所での備えは雹害に強い駐車場・弱い駐車場にまとめています。

だから車はこう凹む|雹害の現場で見ている凹み方の特徴

ここからは修理の現場の話です。当店は大量の雹害車を施工してきましたが、雹の凹み方には、ここまで説明した「できる仕組み」がそのまま表れます

① 車全体が凹む。屋根だけの話ではない

まず前提として、雹害は車全体に及びます。ルーフ(屋根)・ボンネット・トランクは真上から受けるので被害が分かりやすいだけで、ドアもフェンダーも、ピラー(窓まわりの柱)も凹みます。実際の現場では、パネルという範囲にとどまらず、車のあちこちに凹みが入っている状態を見ることが少なくありません。

そしてもう一つ、意外に知られていないのが降り方の影響です。雹はいつも真下に落ちてくるとは限りません。風にあおられて横なぐりに降ることがあり、その場合は車の片側だけ被害が集中します。左右をぐるっと見比べると、片側だけ凹みの数が明らかに多い——雹害車ではよくあることです。

「洗車のときにボンネットは見たけれど、屋根と反対側は見ていない」という方は多いのですが、被害が出ている場所と、普段見ている場所は一致しません。部位ごとの対応は雹害の部位別修理ガイドにまとめています。

② 丸い凹みが、数多くできる

ドアパンチや飛び石のような「1か所の傷」と違い、雹害は丸い凹みが車のあちこちに散らばるのが特徴です。しかも大きさは均一ではありません。ごく浅いものから、はっきり分かる大きく深い凹みまで混ざります。雲の中での育ち方が粒ごとに違うので、落ちてくる雹の大きさも揃っていないためです。

厄介なのは浅いほうです。浅い凹みは正面から見ても平らに見えてしまい、光を映り込ませて角度をつけないと見えません。ご自身で確認する手順は雹害の車をチェックする方法で解説しています。

③ 大きさだけでは被害が決まらない

雹の直径は被害の目安になりますが、それだけでは決まりません。落下してくる角度、風の強さ、パネルの素材や厚さ、塗装の状態——同じ大きさの雹でも、条件が違えば凹み方は変わります。大きさ別の傾向は雹の大きさと車の被害の関係で詳しくまとめています。

④ 塗装が無事なら、押し戻せる可能性がある

ここがいちばんお伝えしたい部分です。雹は氷であり、飛び石のように鋭く硬いものではありません。そのため塗装まで割れずに、鉄板だけが凹んでいるケースが多くあります

この状態であれば、PDR(デントリペア)塗装を塗り直さずに形を戻せる可能性があります。塗装を傷めないための配慮をしながら、元の塗装を残したまま直していく工法です。

よくある誤解が「パネルの裏側に工具が入らない場所は直せない」というものですが、そんなことはありません。裏から届かない場所は、表側から引っ張り出すプーリングという技法で対応します。凹みの中心に専用のタブを接着し、工具で引き上げて形を戻す方法です。ピラーや合わせパネル(裏にもう一枚パネルが密着している構造)のように「裏から押せない」場所こそ、この技法の出番になります。詳しくは裏から押せない場所の雹害も直せますをご覧ください。

もちろん万能ではありません。塗装にひび割れ(クラック)が出ているとき、鉄板の伸びが大きすぎるときは、板金塗装やパネル交換が適した選択になります。当店は直せないものを直せるとは申し上げません。直せる雹害と直せない雹害の境界線で、できること・できないことを正直に整理しています。

【補足】雹が当たっているのは、車だけではありません

ここまで車の話をしてきましたが、当然ながら同じ雹は家にも降っています。当店が対応するのは車だけですが、住宅の場合は外壁そのものより雨樋・カーポートの屋根・網戸・アンテナといった付属物に先に被害が出やすいという特徴があります。車を確認するときに、家のまわりも一周見ておくことをおすすめします。

住宅の雹被害は火災保険の「雹災」で対応できる場合があります。判断の考え方は、外壁塗装の情報サイト「ぬりごろ」の外壁塗装に火災保険は使える?(外部サイト)が参考になります。

まとめ

  • 雹とあられの違いは大きさだけ。直径5mm以上が雹(気象庁)
  • 雹は積乱雲の強い上昇気流に支えられて雲の中で育ち、支えきれなくなって落ちてくる
  • 溶けきらずに地上まで届いた氷が雹。大きいほど強い積乱雲だった証拠
  • 降りやすいのは春と秋。夏は上空も暖かいため、実は頻度が低い
  • 前触れは真っ黒い雲・雷の音・急な冷たい風
  • 車の被害は屋根だけでなく全体に及び、横なぐりだと片側に集中する
  • 凹みは浅いものから大きく深いものまで混ざる
  • 塗装が割れていなければ、塗り直さずに直せる可能性がある。裏から押せない場所も表から引いて直せる

降雹のあとに車が心配になったら、まずは雹害直後にやるべき6ステップとNG行動をご覧ください。雹害そのものの全体像は雹害とは何かにまとめています。

出典

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雹の被害は、パネルごとの状態を見ないと判断がつきません。LINEで写真をお送りいただければ、対応できるかどうかと、おおよその料金幅をお返事します(正式なお見積りは現車確認のうえ)。当店では難しいと判断した場合も、その旨を率直にお伝えします。

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